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借地権を相続するのに地主の承諾は必要?法的なルールと実際の対応方法について

親が借地に建てた家に住んでいる場合、相続により借地権を取得することがあります。このとき「借地の名義が変わるから、地主に承諾してもらわないといけないのでは?」と心配になる方もいるでしょう。
誤った対応をしないため、誤った主張を受け入れてしまわないために、借地権の相続に関するルールや対応方法をご確認ください。

一般的な「賃借権の譲渡」には承諾が必要

借地権とは「土地の賃借権」を意味し、賃借権一般については民法の次の規定が適用されます。

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

引用:e-Gov法令検索 民法第612条
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

つまり、借地権を第三者に譲り渡すときは地主(賃貸人)の承諾が必要です。
地主にとって「誰が借主であるか」は重要な関心事であり、契約時の信頼関係を前提に成り立っていますので、自由に変えられるものではありません。勝手に別の人に権利を移されてしまうと、土地の使い方が変わったり、その方の経済力によっては地代の支払いが滞ったりするおそれもあるためです。

相続による承継なら承諾不要

借地権は財産権の1つであり、預金や不動産と同じように相続の対象となります。そして相続の際に地主の承諾を得る法的義務もありません。
その理由は、「相続による借地権の承継」と民法第612条の「譲渡」が別物と捉えられていることにあります。
また、承諾が不要であることに加え、名義書換料や承諾料などの名目で金銭を支払う法的義務もありません。

地主への連絡はしておく

法的に地主の承諾が不要とはいえ、借地権を相続したという事実は地主に連絡しておいた方が良いです。
「元の借主が亡くなったこと」「ご自身が相続人となったこと」「連絡先」「今後の地代の支払先(振込名義など)」など情報を地主に伝えておきましょう。

地主に「承諾しない」と言われたら?

もし、地主から「承諾できない」「契約は更新しない」と主張をされたらどうすればいいのでしょうか。
地主側が法律の解釈を誤解しているケースもあれば、何らかの理由で契約を終わらせたいと考えているケースもあるでしょう。
このようなとき、相続人であることを示すとともに、法的に借地権の相続で承諾が不要であることを主張しましょう。

相続人であることを示すには戸籍謄本等を使います。また、特定の方が取得したという事実も、遺言書または遺産分割協議書を用いて示すことができます。
借地権の相続に地主の承諾が不要である点については法律の条文や判例などを示すと説得力が増しますが、対応の難易度が高いため弁護士にご依頼いただくことをおすすめします。

承諾料や名義変更料を求められたら?

契約の継続自体に意見の相違はないものの、地主から「承諾料を支払って下さい」などと主張される可能性もあります。
借地契約書に「名義変更の場合は承諾料を支払う」という条項が記載されており、このルールを根拠に主張してくることも考えられます。
ただ、この規定があるからといって一律に支払いの義務があるとはいえません。
通常、契約上の「名義変更」は当事者の意思による譲渡を指すものですので、相続であれば承諾料の支払義務が生じない可能性は高いです。

相続開始後の承継でも承諾が必要なケース

相続に伴う借地権の取得では基本的に承諾が不要であるものの、以下のように注意すべきケースがあります。

遺贈で取得する

遺言により、相続ではなく「遺贈」として第三者が借地権を取得する場合、承諾が必要となります。
厳密には「特定遺贈」と呼ばれる、特定の財産を指定して行う遺贈のケースで承諾が求められます。借地権を明示的に特定の人物に遺贈する行為は、相続というより贈与に近いことから、一般的な譲渡同様のルールが適用されるのです。

これに対し「包括遺贈」と呼ばれる、遺産の割合を指定して包括的に行う遺贈のケースでは承諾が不要とする見解も有力です。
借地権を指定せず「遺産の1/2を○○に遺贈する」などと記載されている場合、その割合で受遺者は相続人と同じ地位を得るためです。

遺言を作成する側、受遺者側ともにこのような違いがあることを知っておくと良いでしょう。

相続後に借地権を第三者に譲渡する

「借地権を相続したけど、土地を使う予定がないから売ろう」などと考えているなら要注意です。相続によって取得した借地権でも、その後に第三者へ売却したり贈与したりするときは、原則どおり地主の承諾が欠かせません。
承諾が得られないときは、裁判所で、承諾に代わる許可を求める手続きを取ることになります。

まとめ

相続によって借地権を承継した後も、地主との関係は続きます。良好な関係を維持することは重要ですので、法律上は承諾が不要とはいえできるだけ地主と対立しないよう配慮しましょう。
特に注意したいのは次の点です。

  • 地代を遅れずに支払う(引き落としの名義変更も忘れない)
  • 建物の増改築など、借地上の建物に変更を加える場合は事前に相談する
  • 地主からの連絡に迅速に対応する

必要に応じて弁護士などの専門家の力を借りながら、手続きを進めていきましょう。