CLOVER法律事務所

TOP        基礎知識 遺留分を侵害されたときの...

Knowledge基礎知識

遺留分

遺留分を侵害されたときの対応に期限はある?知っておくべき時効と対処法

法律で定められた最低限の相続分である「遺留分」を侵害されたとき、遺産を受け取った方に対して金銭の支払いを求めることができます。
しかし、この遺留分侵害額請求には期限があることをご存知でしょうか。期限を過ぎてしまうと、せっかく法律で認められた権利も行使できなくなる可能性があります。

遺留分侵害への対応には「時効」がある

法律で正当に認められた権利を持っていたとしても、一定期間が経過することでその権利は行使できなくなってしまいます。これは「時効」という法律上のルールで、遺留分の侵害を受けたときの対応、遺留分侵害額請求権についても時効は適用されます。

具体的には、「相続開始および遺留分侵害にあたる贈与・遺贈があったと知ったときから1年間」という短期の時効期間と、「相続開始から10年」という長期の時効期間が定められています。

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

引用:e-Gov法令検索 民法第1048条
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

1年間で遺留分侵害額請求はできなくなる

2つの期限が法定されていますが、請求権を持つ相続人がまず留意すべきは1年間の消滅時効期間です。
各種相続手続きにも対処しながら遺留分の侵害についても確認し、請求の手続きを進めていかなくてはなりませんので、気付いたときには期限を過ぎてしまっていたという状況にもなりかねません。
ただし、この1年という時効の起算点は以下2点を知った時点からであって、相続開始時点から進行するとは限りません。

  • 相続の開始を知った
  • 遺留分を侵害する贈与や遺贈の存在を知った

※単に遺言書や贈与の存在を知るだけでは不十分で、それらに基づく行為が「自分の遺留分を実際に侵害している」という認識が得られた時点から、1年間の時効がスタートする。

遺留分侵害額請求権は金銭債権へ転換する

消滅時効期間が起算され始めてから1年間放置していると、その後請求をされても相手方から「その請求権は時効によって消滅しています」などと反論を受けることになるでしょう(これを「時効の援用」という)。
そこで1年を経過する前に相手方へ「遺留分侵害額の請求をします」などと意思表示を行いましょう。裁判所への調停の申し立てや訴訟の提起もこの権利の行使にあたります。
この意思表示により遺留分侵害額請求権の時効消滅は免れることができますが、意思表示によって当該権利は金銭債権(相手方や金銭を支払うよう求める権利一般のこと)へと転換します。
1年間という期限を心配する必要はなくなりますが、次は、「5年間」という時効期間内に対処することが求められます。
この期間を過ぎると、金銭債権が消滅してしまいます。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用:e-Gov法令検索 民法第166条第1項
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

特定の行為で時効消滅を防ぐことができる

消滅時効のルールが適用される場面でも、その期間中に一定の行為があると、進行した期間がリセットされたり、一時的に時効消滅が妨げられたりすることがあります。
進行した期間のリセットは法的に「時効の更新」と呼ばれ、たとえば次の行為があるときにその効力が生じます。

  • 相手方が債務の存在を承認した場合
    例)遺留分を侵害している相手方が、「確かに遺留分侵害額を支払う義務がある」と認めたときなど。
  • 裁判上の請求により確定判決を得た場合
    例)遺留分侵害額請求訴訟を提起し、債務者の支払義務を認める確定判決を得たときなど。

一時的に時効消滅を防ぐことは法的に「時効の完成猶予」と呼ばれ、たとえば次の行為があるときにその効力(その手続き中など、所定の期間は時効で消滅しない効力)が生じます。

  • 相手方に催告をした場合
    例)遺留分侵害額の支払いを求める内容証明郵便を送付したときなど
  • 訴訟や調停を申し立てた場合
    例)遺留分侵害額請求訴訟を提起したときなど
  • 協議を行う旨の書面での合意があった場合
    例)遺留分侵害額の支払方法について協議することを債務者と書面で合意したとき

発覚が遅れた場合でも10年間の除斥期間に注意

1年間の消滅時効期間が起算されるタイミングは、権利者の主観によって異なります。遺留分侵害の事実を把握できなければ期間が進行しません。

一方で、権利者がその権利を行使できると知らなかったとしても、相続開始から10年間が経過することによっても当該権利は消えてしまいます。
この10年間は「除斥期間」と呼ばれ、上記の消滅時効期間とは異なり、「時効の更新」や「完成猶予」で権利の消滅を防ぐことができません。機械的に、相続開始から10年の経過で、その権利は消滅してしまうことに注意しましょう。

仮に相続が開始していることすら知らなかったとしても除斥期間経過による権利消滅は防げません。

まとめ

権利を失わないためには、各種対応一つひとつを迅速に進めていくことが求められます。
誰が何をどれだけもらうことになっているのか、「遺言の内容」や「財産の分け方」をまず確認しましょう。自分の持ち分が極端に少ない、誰かが遺産の多くを持っていったのかも、と感じたときはできるだけ早く弁護士へご相談ください。内容によっては過去に行われた贈与までさかのぼって調べる必要もあります。

そして、遺留分の侵害が疑われるときは、なるべくすぐに「遺留分を請求します」と伝えることが重要です。方法も、口頭ではなく記録に残るような方法(たとえば郵便局で送る「内容証明郵便」など)を選択しましょう。

請求を行い受け取るべき金額が決まってからも、きちんと支払いが行われるまで対応を続けなければなりません。なかなか支払いに応じてもらえないときは、弁護士を利用して法的な措置を取ることも考えましょう。