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遺留分侵害額請求には訴訟が必要?手続きの流れと準備のポイント
遺留分侵害額請求は、必ずしも訴訟で解決すべき問題ではありません。
まずは話し合いや調停で解決を図るのが一般的で、訴訟はそこでまとまらないときに選ばれる手段です。
しかしもし訴訟が必要になった場合、どう動くべきか。ここで提起前の準備から裁判の進み方、その他実務上の注意点についても整理していきます。
訴訟の前に必要な対応
遺留分侵害額請求は「遺言や生前贈与によって法律上保障された最低限の取り分を侵害された相続人が、その侵害額に相当する金銭の支払いを求めること」を意味します。現物の返還ではなく、金銭請求となるのもポイントの1つです。
また、実際にはいきなり裁判を起こすのではなく、まず内容証明郵便などで請求の意思を示し、その後に当事者間で交渉を行います。
そして交渉でまとまらない場合でも家庭裁判所へ「調停」を申し立て、その調停でも解決できなかったときに訴訟へと移る流れが一般的です。
※遺留分侵害額請求の事件で原則として先に調停を経る必要がある。
訴訟が必要になりやすい場面とは
遺産の範囲や評価額、生前贈与の有無など、金額の土台となる事実に争いがあるとき、話し合いでまとめるのは難しくなってきます。
そのほか、次のような状況にあるときは訴訟になる可能性が出てくるでしょう。
- 相手方が請求を無視し、交渉や調停に十分応じてくれない
- 不動産の評価額について双方の認識に大きなずれがある
- 生前贈与があったかどうか、またその金額について争われている
- 遺留分を算定する基礎となる、財産の範囲に対する認識に食い違いがある
- 特別受益の有無やその内容について対立がある など
このように、訴訟は常に関係性が悪いから起こるわけではありません。
訴訟の提起前に必要な準備
訴訟では、感覚的に「不公平だ」と訴えるだけでは足りません。
請求する側が、誰が相続人か、どの財産があったか、どの遺贈や贈与がなされたか、いくら遺留分が侵害されたかを、資料に基づいて整理していく必要があります。
集めるべき主な資料は次のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 遺言書の写しや検認調書謄本の写し
- 不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、不動産鑑定評価書
- 預貯金通帳の写し、残高証明書、取引履歴
- 生前贈与の事実がわかる契約書、振込記録、通帳の写し
特に不動産や生前贈与が絡む事案では集めるべき資料が多くなってきますので、早い段階から資料収集に着手しておいた方が良いでしょう。
訴訟の始まり方
調停が不成立になるなどして訴訟を提起する場合、地方裁判所に訴状を提出しなければなりません。
※請求額が140万円以下なら簡易裁判所が管轄になることもある。
そして訴状を提出する際には、訴状のほか、証拠書類、収入印紙、郵便切手なども用意します。
その後訴状が受理されると、裁判所が被告へ訴状を送達。第1回の期日が指定され、そこから書面と証拠を出し合いながら争点を整理していく流れに入ります。
訴訟の進み方
訴訟も調停同様、1回の期日で結論が出るものではありません。
複数回の期日を重ねながら、原告と被告がそれぞれ準備書面を提出し、事実関係と法的な主張を詰めていくのが一般的な流れです。
基本的な流れは次のように整理できます。
| 訴訟の段階 | 内容 |
| 訴状の提出 | 管轄裁判所に訴状と添付資料を提出 |
| 答弁書の提出 | (被告側)請求を認めるか争うかの姿勢を示す |
| 口頭弁論 | 双方が主張を確認し、今後の争点や提出資料を整理する |
| 準備書面の提示 | 生前贈与、不動産評価、特別受益などの争点ごとに主張と反論を重ねる |
| 証拠調べ | 書証のほか、必要に応じて本人尋問や証人尋問、不動産鑑定などが行われる |
| 和解の検討 | 裁判官が和解案を示し、合意できれば和解調書で終了する |
| 判決 | 和解に至らない場合は判決となり、確定後は強制執行の対象になり得る |
遺留分侵害額請求訴訟では、財産の内容や金額に関する事実認定が中心になります。
そのため、通帳・不動産資料・戸籍・贈与関係資料などの準備がとても重要になってきます。
和解で終わるケースも多い
訴訟まで進んだとしても、必ず判決になるわけではありません。実際、審理の途中で裁判官が和解を勧め、条件面を調整して解決する例も多く見られます。
また、和解には支払時期や分割払いの可否などを柔軟に決めやすいという利点もあります。
もっとも、和解でも判決でも、相手方が支払いに応じなければ最終的には強制執行を検討することになるでしょう。
そこで訴訟を視野に入れた段階で、相手方の支払能力や回収可能性も含めて見通しを立てておくことが大切です。
まとめ
遺留分侵害額請求では遺産の内容や評価、過去の贈与の有無・金額といった事実関係が争点になりやすく、その整理と立証の準備が結果を左右することになるでしょう。
準備や裁判所での対応に少しでも不安があるなら弁護士へご依頼ください。
なお、訴訟で争うことは必須ではなく、むしろ先に当事者間の話し合いや調停手続きを済ませておくのが一般的な流れです。
調停でも解決できなければ訴訟に進みますが、訴訟段階でも和解で終わる事案が少なくなく、その場合条件を柔軟に取り決める余地があります。