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遺留分の請求はどこまで遡る?対象となる財産と過去の贈与の扱いを解説
遺産の大半を取得した方は、一部の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
さらに遺留分に関して留意したいのは、遺産の取得だけでなく生前に受け取った財産も遺留分の請求に含まれ得るという点です。
具体的にどの財産が対象となるのか、過去に受けた贈与との関係についてもここで解説します。
遺留分侵害額請求の対象となる財産の概要
遺留分を計算するうえで基礎となる財産は、次のような構造となっています。
①相続開始時の遺産・遺贈+②持ち戻し対象となる贈与財産-③相続債務
この結果に対して遺留分割合を掛け合わせた金額が、各人の遺留分の基準額となります。
注意が必要なのは、生前の贈与でも対象になるという点です。
すべての生前贈与が対象となるわけではなく、受贈者(受け取った人)が相続人かどうか、タイミングによっても取り扱いが変わります。
相続人への生前贈与・特別受益について
生前に相続人の一人へ財産を渡していたときは、その贈与が「特別受益」に該当するかどうかが重要になります。
※特別受益とは遺産の前渡しと評価できる贈与のこと。
特別受益にあたる贈与の例
すべての贈与が特別受益に該当するわけではなく、主に以下のようなものが特別受益にあたると考えられています。
| 贈与の背景 | 内容の例 |
| 結婚や独立の際の支援 | 持参金、支度金、結婚資金の贈与 |
| 住宅取得の支援 | マイホーム購入時の頭金、土地や建物自体の贈与 |
| 事業に関する支援 | 開業資金、事業用設備・不動産の贈与、事業承継に際しての株式の贈与 |
| 借金の肩代わり | 相続人の多額の借入金を被相続人が代わりに返済 |
| 高額な教育費 | 一般的な教育を超える学費(私立医学部の授業料など) |
一方、通常の生活費の援助や一般的な学費の負担、お小遣いなどは特別受益にはあたりません。
加算対象は前10年以内が原則
相続人への贈与が特別受益にあたるとしても、遺留分の計算に加えられるのは「相続開始前10年以内に行われた贈与」に限られます。
例)父が亡くなる7年前に長男に対して1,000万円の開業資金を贈与した。特別受益にあたる場合、行為があったのは10年以内のため、遺留分の計算に加える。よって、父の遺産が5,000万円であれば、遺留分算定の基礎は6,000万円(5,000万円+1,000万円)になる。
同じ贈与内容でも12年前に行われていたとすれば、原則として遺留分の算定では考慮しません。
※ただし例外あり(後述)。
遺留分請求時と遺産分割時では扱いが異なる
特別受益の「10年以内」という制限は、あくまで遺留分を算定するうえで基礎財産に加算する場面での話です。
相続人間での遺産分割(各自の取得額をどう決めるか)においては、特別受益に期間の制約はなく、何十年前の贈与であっても対象となります。
また、遺留分の請求を行う方自身が受けた特別受益がある場合も、その金額は請求できる金額から差し引かれます。
この計算においても年数制限がなく、過去に受けた特別受益が多ければ請求できる金額が減ることになります。
特別受益の評価額は「贈与時」ではなく「相続開始時」
特別受益が存在する場合、遺留分に関する請求や遺産分割協議の際、贈与された財産の金額を算定する必要があります。
ここで大事になるポイントは、評価額を「贈与した時点」ではなく原則「相続開始時(亡くなった時点)においてその財産がそのまま残っていたとしたらいくらか」で判断するという点です。
例)15年前に贈与された土地が当時500万円の価値だったとしても、相続開始時に1,500万円に値上がりしていれば、1,500万円として計算する。逆に値下がりしていれば、その時点の低い価額が基準になる。
相続人以外への贈与は前1年以内が対象
相続人ではない方(孫・子の配偶者・友人・内縁パートナーなど)への生前贈与は、相続開始前1年以内に行われたものだけが加算対象です。
もし被相続人が孫(息子の子で代襲相続人ではない)に対して、亡くなる3年前に500万円を贈与していたとしましょう。
孫は相続人ではないため、この贈与は原則として遺留分算定の対象外です。
これに対し、亡くなる半年前に同じ孫に贈与していた場合は、1年以内にあたるため対象です。
「双方が損害を知って行った贈与」は期間の制限なし
10年・1年という期間制限を超える贈与であっても、贈与した側(被相続人)と受け取った側(受贈者)の双方が、その贈与が遺留分権利者に損害を与えることを知ったうえで行っていた場合、例外的に対象となります。
たとえば、「長男に財産を集中させたい」という意向から、12年前に不動産の大半を長男に贈与し、その時点で長男も「これで妹の取り分はほぼなくなる」と認識していたようなケースです。
まとめ
遺留分は「亡くなった時点の遺産」だけで決まるのではなく、一定の生前贈与も含めて全体像を見て判断します。
特に相続人への贈与は、時期や内容によって遺留分の計算に影響し、相続人以外への贈与も直前のものは対象になり得ます。
生前の資金移動は争いの火種になりやすいため、贈与の記録や趣旨を整理しておいて相続トラブルに備えましょう。